質問カードを持ち、いつもの知人とまだ知らない人へ分かれる道の前で考えるビジュくんのイメージイラスト

水曜の朝、ビジュくんはノートに三つの名前を書いた。案内をどこで見つけたか、もう少し人に聞いてみたい。昨日、一人の経験を「町の人はみんな」と言い換えそうになり、慌てて書き直したばかりだ。今度は何人かに聞けば、少しは確かなことが分かるだろうか。

ところが名前を見返すと、三人とも先月の集まりで話した知り合いだった。年代も、よく立ち寄る場所も似ている。連絡先を知っている人から始めれば早い。でも、同じ場所に来られる人だけに聞いて、案内が届いていない人のことまで分かるだろうか。ビジュくんは送信しかけたメッセージを閉じた。

この物語に登場するビジュくん、知人、協力者、会話、企画は創作です。実在する地域の調査結果や住民の傾向を示すものではありません。

三人に増やしても、見える範囲は同じかもしれない

ビジュくんは昨日の三つの欄を横に置いた。「聞いたこと」「自分の考え」「次に確かめたいこと」。今朝書いた三つの名前は、最後の欄を埋めるためのつもりだった。けれど、よく見ると三人とも、同じ会場の同じ時間に顔を合わせた人だ。誰が答えてくれるかを考えた結果、答えやすい人だけが残っていた。

もちろん、知り合いに聞くこと自体が悪いわけではない。最初の会話を始めやすく、曖昧な答えをその場で聞き直すこともできる。ただ、そこで似た話が続いても「町ではそうらしい」とは書けない。案内を見つける前に、集まりの存在をどう知ったのか。その集まりに来なかった人は、どこで情報に出会うのか。ビジュくんが本当に知りたいのは、ノートに名前を書けなかった人の経験かもしれない。

彼は三人の名前を消さず、紙の端に「今、声をかけやすい人」と書いた。その隣には広い空白を残す。「まだ話を聞けていない人」とだけ記した。人数を増やす前に、偏りを見える形にしたかった。空白は少し落ち着かないが、知らない人を知ったふりで埋めるよりはいい。

同じ知り合いの名前が並ぶ連絡先の図を見て、赤いペンを止めるビジュくんのイメージイラスト
同じ知り合いの名前が並ぶ連絡先の図を見て、赤いペンを止めるビジュくんのイメージイラスト(イメージイラスト)

「誰が足りないか」を、勝手に決めない

昼前、ビジュくんは企画を一緒に考える知人に電話した。「知り合い以外にも聞きたい」と話すと、知人はまず「何を決めるために聞くの?」と返した。ビジュくんは答えに詰まる。案内を置く場所を決めたいのか、文章の読みやすさを確かめたいのか。二つを一度に聞こうとしていた。

二人は目的を分けた。案内を見つけた場面は、どんな経路があるかを知るために聞く。実際の案内文を読んでもらうのは、内容が伝わるかを確かめるために行う。前者で「掲示板がよい」という結論を急がない。後者なら、知人の意見を一つ集めるだけでなく、初めて読む人が迷う箇所を見る必要がある。何を知りたいかで、声をかける相手も変わる。

ビジュくんは「高齢者にも聞かなきゃ」と言いかけて止まった。年齢だけで案内の見方が決まるわけではない。仕事帰りにしか動けない人、紙を手に取る人、誰かの紹介で来る人、オンラインで知る人。違いはいくつもあるし、外見からは分からない。相手を分類するために話を聞くのではなく、案内に触れた具体的な場面を教えてもらう。知人も「属性の枠を先に作りすぎないほうがよさそう」と言った。

知人と机を挟み、質問の目的を分けて考えるビジュくんのイメージイラスト
知人と机を挟み、質問の目的を分けて考えるビジュくんのイメージイラスト(イメージイラスト)

声をかける前に、相手の時間を考える

午後、ビジュくんは人が集まる場所へ向かった。会場にいる人へ突然質問を始めるつもりだったが、入口で足が止まった。相手は用事があって来ている。ビジュくんの知りたいことは、相手の予定より優先されない。まず運営している人に、ここで短い聞き取りをお願いしてよいか、場のルールを確かめることにした。

返事を待つ間、ビジュくんは声のかけ方を紙に書いた。何のために聞くのか。何分ほどかかるか。答えなくても構わないこと。話した内容をどう扱うか。個人が分かる形で公開しないこと。後から考えるのではなく、最初に説明できるようにする。もし場に合わなければ、今日は質問せず、別の方法を探す。

運営している人は、会場内での聞き取りは予定に入っていないので控えてほしいと伝えた。ビジュくんは少し残念だったが、来た人の時間を守る判断だと受け止めた。代わりに、主催側へ企画の目的を整理して相談し、協力を募る方法があるか後日確認することにした。聞く相手を増やすために、その場の信頼を減らしては続かない。

会場の入口で運営する人に相談し、無理な声かけを控えるビジュくんのイメージイラスト
会場の入口で運営する人に相談し、無理な声かけを控えるビジュくんのイメージイラスト(イメージイラスト)

二つだけ聞いて、答えない自由も渡す

夕方、先に連絡していた知り合いの一人から「短い質問なら」と返事が来た。ビジュくんは約束した時間に会い、目的と使い方をもう一度伝えた。「最近、何かの案内を知ったのはどんなときでしたか」「そのとき、どこで見つけましたか」。質問は二つだけ。思い出せなければ、それも答えの一つとして受け取る。

相手は少し考えてから、知り合いに教わった催しを一つ挙げた。ビジュくんは内心「また人づてだ」と思う。二人続けて同じ経路を聞くと、昨日消した結論が戻ってきそうになる。そこで「ほかの案内も、いつもそうですか」と聞く代わりに、「その催しの案内は、ほかでも見かけましたか」と、その出来事の範囲で尋ねた。相手は「覚えていない」と答えた。

ビジュくんはその言葉もノートに残す。覚えていないことを「見ていない」に変えない。答えのない欄を急いで埋めない。最後に、話した内容を短く読み返し、違うところがないか確認した。相手が話さなかった私生活や連絡先は記録しない。今日聞けたのは一人の、一つの催しについての記憶だ。それ以上には広げない。

短い質問カードを差し出し、相手の返事を急がず待つビジュくんのイメージイラスト
短い質問カードを差し出し、相手の返事を急がず待つビジュくんのイメージイラスト(イメージイラスト)

数ではなく、次の確かめ方が見えてきた

帰り道、ビジュくんはノートの三つの欄に今日の出来事を足した。「聞いたこと」には、知り合いがある催しを人づてで知ったこと。「自分の考え」には、案内を人が伝える場面もありそうだ、という仮説。「次に確かめたいこと」には、まだ会えていない人が案内を探す場面と、実物の案内文で迷うところを分けて書いた。

最初に書いた三人へ順番に聞くだけでは、見える範囲が狭いままかもしれない。かといって、知らない人へ次々に声をかければよいわけでもない。どんな協力が必要かを説明し、断れる形を用意し、場の管理者に相談する。そうして初めて、相手の経験を借りる入口ができる。ビジュくんは知人へ「今日は一人に聞いた。結論はまだ出していない」と送った。

知人から「案内文を見てもらう日は、目的と時間を先に伝えよう」と返事が来た。ビジュくんは次の予定表に小さく印をつける。次は聞く人数を競う日ではない。どんな問いなら相手が答えやすく、企画にも役立つのか。案内の試作品を持って、もう一度考えよう。

前回は一人の声を町全体の答えにしない話、その前には人を紹介する前に了承を確かめる話を書きました。ビジュくんの挑戦は、聞けた声を数えるところから、まだ聞けていない経験に気づくところへ進んでいきます。

聞いたことと仮説を分け、まだ聞けていない人のための余白を残すビジュくんのイメージイラスト
聞いたことと仮説を分け、まだ聞けていない人のための余白を残すビジュくんのイメージイラスト(イメージイラスト)