畑を、暮らしの学び場に。
渡良瀬エコビレッジは、2007年に発足した栃木県栃木市藤岡町を拠点とするNPO法人です。
土地の持つ力を活かす、農薬や化学肥料を使用しない方法で長年手入れをし、米や野菜、綿花を育て、そこでの経験をワークショップや交流の場へつないでいます。農のある暮らしを、眺める風景から一歩進んで、自分で関わって考えるものとして伝えています。
活動の場として中心となる昔ながらの工法で作られた民家があります。畑で過ごす時間と、食べること、手を動かすことが出会う場所です。
活動を支える仲間には、地域の人や個人の会員に加え、法人会員として豊島株式会社や株式会社ZOZOといった繊維・アパレルの企業も名を連ねています。
身近なものの向こうにある、土地や人の営みを知る。渡良瀬エコビレッジをたどる入口は、そんな日常とのつながりにあります。

「やまずめぐる」を、衣・食・住から。
「やまずめぐる」とは、「止まず巡る」ということ。渡良瀬エコビレッジは、日本に古くからある循環型の暮らしを見直し、その知恵を衣・食・住のさまざまな場面で生かすことを目指しています。
衣・食・住は全て、同じ土の上で繋がっています。全てのものは、手元に届く前に、膨大な時間と仕事があります。体験を通じて実感したことが、いまの暮らしの小さな変化につながっていく。その願いが活動の根にあります。
CLOTHING衣
いつも着ている服の素材を、和綿の種や畑から考える。
FOOD食
農作業や野菜の収穫を通じて、食卓までの道のりにふれる。
HOUSING住
昔ながらの民家や畑を舞台に、暮らす場所と自然との関係を見つめる。
服のはじまりを、畑で知る。


和綿は、日本の在来種の綿です。国内の綿花栽培自給率は0%で、中でも長い年月をかけて、日本という環境に適応してきた和綿の存在は年々貴重になってきています。渡良瀬エコビレッジでは、この和綿を育てる活動が、衣服の素材を知る入口になっています。
5月に種をまき、夏に草を取り、秋に手作業で収穫。農薬や化学肥料を使わずに育てる和綿の栽培に、これまで多くの人が加わってきました。
種まきの日には、畑に直接まくだけでなく、ポットにも種をまきます。芽が虫に食べられたり枯れたときに植え替える、予備の苗です。
芽が出るまでの時間も、年によって違います。種まきの時期に35度を超えた年には、雨が少なく、芽がそろうまで2週間近くかかりました。土の中で出るタイミングを待つ種の力を信じて、畑を見守ります。
春の種まき、夏の手入れ、秋の収穫。同じ畑でも、関わる時期によって見える仕事が違います。一枚の服になるものが、育つ植物や、収穫を待つ時間と結びついていきます。
種まき
土にふれ、素材が育ち始める瞬間に立ち会う。
草取り・手入れ
収穫まで続く、人の仕事を知る。
手作業での収穫
実が弾けて現れた綿を、一つずつ集める。
収穫の先にも、手仕事がある。
秋の畑で見える白いかたまりの正体は、実が弾けて現れた綿です。夏に黄色い花が咲き、やがて実をつけ、その実が割れて綿が顔を出します。
収穫した綿には、種が包まれています。そこで行うのが、種と綿を取り分ける「綿繰り」です。木製の綿繰り機に綿を送り込むと、ローラーの間を綿だけが通り抜け、種が手前に残ります。
種が付いた綿、取り分ける道具、作業後のふんわりとした綿。それぞれを見比べると、ふだん目にしない工程が具体的になります。取り分けた種は、次の年にまく種にもなります。
綿繰りの先には、糸を紡いで布にする道も、綿のまま詰め物に使う道もあります。一つの素材から、使い方がいくつにも広がっていきます。


綿と古着が、一つのクッションに。

ZOZOは2025年から、渡良瀬エコビレッジで和綿の栽培に参加しています。豊島株式会社と「つながるコットン」プロジェクトを共同で立ち上げました。
2026年3月には、ここで収穫した和綿を使い、ZOZOが社員向けにクッションづくりのワークショップを開きました。カバーには、ブランド古着のファッションゾーン「ZOZOUSED」で販売基準に満たないアイテムの生地を活用。和綿は中材の一部に使われました。
畑で育てた素材と、すでに衣服として存在していた素材が、一つの生活用品に重なる。自然が生み出す営みが、企業の学びや暮らしのものづくりに届いています。
和綿の道のり
畑で育てる → 手作業で収穫 → 綿繰りで種を分ける → 中材の一部に。
古着の道のり
ZOZOUSEDで販売基準に満たないアイテム → 生地をカバーに活用。
企業も学生も、畑では学び手。

アパレルに関わる人が、自分たちの扱う素材を畑で学ぶ。渡良瀬エコビレッジの種まきには、服飾業界の企業から毎年多くの人が訪れ、年間100名ほどが畑に訪れています。
2026年の種まきには、ZOZOの社員、豊島の新入社員、青山学院大学の学生などが参加しました。職場や学校では違う立場にいる人たちが、同じ素材にふれ、作業の意味を教わります。
10年にわたって活動に参加する人と、初めて畑を訪れる学生が、同じ畝に並ぶ。長く関わる人から初めての人へ、学びが手渡されていきます。
畑で出会う虫や土の手ざわりに、参加者は素材の背景を感じ取ります。場所が変わると、ものの見え方も変わる。その経験が、ものづくりの現場へ持ち帰られていきます。
一日の体験を、暮らし全体へ。
渡良瀬エコビレッジでは、季節に合わせた農事イベントを一般の方向けにも開催しています。毎年11月の収穫祭も、その一つです。午前は綿つみや野菜の収穫、昼はつきたての玄米もちや旬の野菜料理。畑で火を囲み、音楽とともに一年の収穫を分かち合います。2026年は11月22日に開く予定です。


体験の日を支える、日々の手入れ。

種まきや収穫の日には、たくさんの人が集まります。人が集まる時以外にも、もちろん畑の仕事は続きます。近年、厳しい天候に変化する中で、試行錯誤しながら、収穫ができるようになるまで、スタッフが手入れをしています。
冬には綿の畑を片付け、灰をまき、肥料を入れて耕し、次の種まきに備えます。毎年新しいことを試しながら、ワタにも環境にも良い影響が見えるような作り方を模索しています。
夏の暑さが続いた年には、背丈が伸びすぎて枝が混み合い、日当たりと風通しが悪くなりました。摘心を重ね、来年の工夫を考える。育ち方を見ながら手を入れる判断も、畑を支える仕事です。
体験と体験の間を支える仕事があって、次に訪れる人も畑に出会えます。地域で活動する人と外から訪れる人の関係を、その日限りでなく考えるきっかけがここにあります。

