朝摘みの一粒を、その日の直売へ。
いちごは、収穫してからさらに甘くなる果物とは違います。時間がたつほど、甘みやうま味は少しずつ失われていく。だから小竹いちご園は、朝に摘んだいちごを、その日のうちに直売所で販売します。
畑で赤く色づき、食べ頃を迎えた実を見極めて摘む。みずみずしさと香りが残るうちに、買いに来た人の手へ渡す。

田んぼだった土地で、家族のいちごづくりが始まった。

農園の始まりは、米づくりの家業です。祖父の代から続く米農家を両親が引き継ぎ、2004年にいちご栽培を始めました。もともと田んぼだった土地で、地域の栽培経験者に学びながら、いちごづくりの技術を身に付けていきました。
育てたいちごを、どう知ってもらい、どう買ってもらうか。息子の小竹隼人さんは大学・大学院時代から農園に関わり、作業場の一角を使った直売所の開設を提案しました。
つくる仕事に、届ける仕事を加える。家族それぞれの役割が重なり、いまの農園の形ができています。
農園のある長久保には、明治19年(1886年)に開業し、約10年で姿を消した「長久保駅」がありました。“幻の駅”があった土地で、家族は20年以上いちごを育てています。
直売所とInstagramが、畑と食べる人を近づけた。
収穫したいちごの多くを市場へ出荷していた農園は、収穫量を増やすのではなく、売り方を設計し直しました。直売所を開き、所在地や営業時間をインターネットに載せ、ふるさと納税やブランドづくりにも取り組む。いちごはそのままに、届け方を変えてきました。
2019年以降、隼人さんは東京で会社員を続けながら、農園の経営を離れた場所から支えます。Instagramの初期は、母・美也子さんが写真を撮り、隼人さんが投稿を担当。農家の日常は、食べる人には新しい発見になる。2024年の取材の頃には美也子さん自身が運用するまでになりました。
直売所は、いつしか人が集う場所にもなりました。SNSを見て訪れた母の昔の友人、来るたびに打ち解けていく子ども、近況を話しに立ち寄る夫婦。家でも職場でもない“第3の場所”として、いちごが人をつなぎます。
赤も、白も。品種を知ると、選ぶ時間が変わる。
直売所に並ぶ主な品種は、とちおとめ、とちあいか、スカイベリー、ミルキーベリー、とちひめ。2026–27シーズンのいちご狩りでは、7品種がそろいます。色、大きさ、香り、果肉の柔らかさ。甘さだけではない違いを知ると、いちごを選ぶ時間がもっと楽しくなります。
白い実のミルキーベリーは数が少なく、直売所でも出会えたらうれしい品種。

とちあいか
栃木県が
とちおとめ
栃木の
スカイベリー
大空に
ミルキーベリー
ミルクのように
とちひめ
果肉が
今季の品種を確かめる
収穫の
土、温度、水分。おいしさの背景にある栽培管理。

約800坪のハウスで、土、温度、水分、日照を整えながらいちごを育てます。冬には赤色LEDも活用し、受粉にはミツバチの力を借ります。実がなる前から、収穫までの環境づくりが続きます。
土づくりには有機由来の肥料を活用し、大学と連携して土の中の微生物や、炭素・窒素の循環も分析しています。経験とデータで、土の力を引き出すいちごづくりです。
病害虫対策はIPM(総合的病害虫管理)。捕虫器、天敵のダニやハチ、防草シートを組み合わせ、必要なときには環境への負荷が小さい農薬を使い、化学農薬をできるだけ抑えます。
土で育てるハウスは有機肥料と土の力で、いちご狩りの高設ベンチは有機肥料に化学肥料も組み合わせて育てます。
農園の仕事を、四つの場面に整理しました。区画や品種で方法は変わり、作業は行き来しながら続きます。
育つ環境を整える
土、
受粉と病害虫に向き合う
受粉は
食べ頃を見極めて摘む
実の
品種に合わせて届ける
柔らかな
いちごソムリエとして、違いや楽しみ方を伝える。
農園の経営や発信に関わってきた隼人さんは、2024年12月1日にいちごソムリエの資格取得を発表しました。農園で扱っていない品種についても質問されるようになり、品種や栽培、食べ方を体系的に学び、分かりやすく伝えたいと考えました。
取得後は接客の幅が広がり、知識を商品づくりや発信にも生かしています。農園は「いちごソムリエ認定農園」として、品種の違いや楽しみ方を伝えます。
とちあいかは第1回全国いちご選手権で入賞。令和4年・5年には、いちご王国アンバサダーも務めました。

いちごを買う場所から、農園で過ごす場所へ。

高設ベンチへの設備投資を経て、農園は2025年にいちご狩りへ本格的に挑戦しました。実が育つ場所で摘み、品種の違いを知る時間が加わりました。
2025–26シーズンは、広めの通路、テーブルと椅子、キッズスペース、多目的トイレ、オムツ交換台などを整えて来園者を迎えました。予約は「じゃらん」の事前決済に一本化し、平日の枠にも予約が入るように。
2026年1月には、栃木県の移住体験ツアーで、さくら市の受け入れ先として親子にいちご狩りを届けました。
2025–26シーズンの直売所といちご狩りを合わせた来園は、延べ2,876人と農園が発表しています。次のシーズンに向けては、土で育てるハウスもいちご狩りに開き、駐車場を整える計画です。
品種の個性を、ジャムやドレッシングでも。
生いちごの季節の先にも、農園を知る入口があります。2023年に始めたブランド「SAKUNICHIKA」の、品種別のいちごジャムといちごドレッシングです。シーズン後半に値の下がるいちごを加工し、価値を高めて届ける挑戦から生まれました。
ジャムは、ミルキーベリー、スカイベリー、とちあいか、とちおとめ、とちひめの5品種。150g瓶で、原材料はいちご、てんさい糖、レモン果汁。保存料と人工着色料を使わずに仕上げ、とちひめ以外の4種はさくら市の「さくらブランド」に認定されています。ドレッシングは、赤いいちごの「紅果のしずく」と、白いミルキーベリーの「白果のしずく」。
原料は自家農園のいちごのみ。農林水産省の環境負荷低減の「見える化」で星3つを取得し、「SAKUNICHIKA」と二つのドレッシング名は商標登録も済ませました。販売3年目で、ジャムとドレッシングは累計1,583本に。売り場は10か所へ広がっています。

品種の

赤い

お祝いや
マロニエプラザの展示会で生まれた縁から、売り場は宇都宮や県内の店へ。
道の駅みぶ
日本一広い
あぜみち 中央市場店
宇都宮中央卸売市場の
和牛ステーキ桜 宇都宮店
コース料理の
イヴォワール洋菓子店
農園の


